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しかし驢馬は何も知らず何も予感しなかった、そうして休息や、よい食べ物や、主人の愛撫など、現在の満足のうちで、世にも仕合わせな驢馬であった。その上、驢馬は鹽爺さんと仲良しになり、鹽爺さんから、自分の食いしん坊にとって嬉しい友情の印を貰ったのである。月曜日の朝驢馬は、うまい具合に綱を解くことができたので、届いた屑をせっせと選り分けている鹽爺さんのそばへ行き、珍しそうにそこに立っていた。大体鹽爺さんが、一杯飲みたくなった時−−しきりに飲みたくなる爺さんであったが−−そんな時立たないですむように葡萄酒の一リットル壜とコップを手の届くところにいつも置いておくということは、きちんと実行されている一つの習慣であった。その朝鹽爺さんは全く仕事に身を入れて、自分の周囲を見ようなどとは考えなかった、しかし仕事に精を出し熱を込めたまさにその為に、その渾名の通り、まもなく咽喉が渇いてきた。手を休めて壜を取ろうとして見ると、パリカールが頸を差し伸べて、じっとこちらに眼を注いでいる。
「そんなところでお前、何をしてやがる?」
それが怒鳴りつける調子でないので驢馬は動かなかった。
「やい、葡萄酒を一杯飲みてえのか?」と鹽爺さんは尋ねた、この男の頭はいつも、飲むという言葉を巡って働くのが常であった。
そこで爺さんは、満たしたコップを自分の口へ運ぶ代わり、冗談にパリカールに差し出した、するとパリカールはこのもてなしを真に受けて、二歩前へ進み、唇をできるだけ薄く、できるだけ伸ばして、なみなみと注いだコップを半分も吸ってしまったのである。
「おほう! これは、これは!」
鹽爺さんは大声で笑いながら叫んだ。